絵画療法 - 　社会福祉法人　修倫福祉会

ARTS THERAPY【美術・音楽・農園・薬膳】

加賀見政之

画家（本法人理事）
東海ホリスティック医学振興協会顧問
ウィーン市制定ホクヌブルグ芸術会員
72年より障碍者施設アートセラピー実践
千葉県市川市イメージ絵画塾主幹

イメージ絵画療法

「原始の呼吸を生々しく，素朴な主体性を称えた芸術とアクションペインティングの衝動的内面描出までの展開において，自然界のフォームの肉眼による模擬をイメージ化することにおいて芸術に接する」

イメージ絵画療法について

人間がイメージを絵によって表現したのは，はるかラスコーの洞窟壁画までさかのぼります．医学が発達した現代，特に脳に関しては常識を覆す研究が相次いでいます．脳神経細胞（ニューロン）のかずは生まれたときから減ることはあっても増えることは絶対にないという学説が覆り，近年，成人の脳の記憶を司る「海馬」の部分の細胞が分裂し，新しいニューロンを生み出していることが確認されました．また，人間の脳は終生，その能力を保持し続けることが立証されています．さらに学習や行動に関して，豊かな環境条件を提供することによって大脳皮質に有意に変化を伴うことが少しずつ解明されてきました．
このことの意味することは，私たちが見る，聞く，触れる，味わう，嗅ぐ等を感じ取るのは脳の働きであり，それらをイメージ化するのも脳のもつ記憶のメカニズムによるものです．美術による基本的テーゼ「芸術による援助活動」は人間形成の重要な契機となります．また，各個人の価値が現れる特定潜在能力の異なる「タイプ」の存在と各個人がどのような特質を持って生まれてきたにしろ，これらを受容れ，寛容な芸術の枠内において，その潜在能力を向上させる働きがあります．
さらに，写実，具象，抽象的絵画表現によってイメージを読み取り，精神療法やカウンセリングによる治療に限らず，広くストレス解消，深層心理表出などに活用できます．
豊かな環境提供は，知的精神活動によって言語的イメージ描写が加わり，非言語的な表現を補足したり，日常生活行動に変化をもたらします．
描画活動の中で周囲の音が聞こえなくなり，無意識，意識の構えによる選択の余地のない自己陶酔にはいる．これが脳に優しく刺激を与え，可塑性（ニューロンとニューロンの接合部であるシナプスの活性）を生み出します．事故の内面に解放された自由表現は，喜びとして内的調節がはかられ「内的適応」として感情的側面とともに身体的感覚を伴ってイメージによる絵画表現となってきます．
イメージ絵画療法では，単に知的概念，模写的な表現を中心にするのではなく，多様な技法を持って人間的表現方法をとります．
三万年前の原始洞窟画も先人の絵に重ねて描き，先人が描いた絵は全く眼中になくなり，その間の年代差は五十，百，千年以上あったと考えられます．この徹頭徹尾の現代性（先人の絵にこだわらず直面している時間帯が全て）がラスコーの洞窟壁画での輪郭線から現代の幼児の描く輪郭線に表れています．
潜在イメージの物事を，有史以前から現代でも物理的に存在しない線で対象物を描いています．それは対象の背景との明暗による色のコントラストの勾配による輪郭濃淡をイメージ化することに主観的に表現しています．それは現実にない線であっても長い歳月の環境によって脳にイメージ化されてきます．また，その線が抽象的な線であっても現実感として認知してきました．
環境要因が脳細胞に与える影響が大きいために，援助指導側におごりがあってはなりません．無限の異なる創造形態を受容し，重い障碍の人が描いた作品は「美術の力」によって心地よい「言葉」を共有できます．さらにこれらの作品は精神交流として社会に力を与える自立した心の世界を提供します．本療法に多くの技法を駆使するのは各個人の能力を開発する多様性に対応するためです．
イメージを引き出す環境とは従来の「指導」するという上下の関係ではなく技法の世界で共に創るという係わりが「イメージ絵画療法」の目的です．

イメージ絵画支援例

イメージができない人には、手からの運動を脳に与え、障碍の方々が持つ特有性に対する愛情環境（制作後称賛）、心から褒めることによって、本人の描く意欲を引き出すことが大切です。
利用者さんのある方は、なぐり描きが主であったが、厚紙（ダンボール）で、三角、丸、ハート型に切り抜き、その中に繰り返し描くことによって、その型を取っても描けるようになりました。戻りますが、その繰り返しをすることが支援です。必ず描けるようになります。